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おっちゃん物想う

おっちゃん物想う

或る午後

ふと、空を見上げた。

船が漂っている。

しばらく眺めていたら、船は煙を出しながら進んでいた。

長い間見た事が無い空。

海にも行っていない事を思い出した。

近くに有るベンチに座り眺めてみる事にした。

今日の公園は人影が少ない。

船は何時の間にか車に変わっていた。

車の中に居る時だけが彼の時間だった。

運転はしない。

免許など取れない、生活だった。

人と話をしなくなってどれ位経ったのだろう。

雲はゆっくりとなのだが何時の間にかその姿を変える。

何だか母さんのように成った。

これは耐えられないなと、場所を変える。

もう2時間が過ぎ、日が暮れ掛けてきた。

魚や、鳥へ、ピラミッド等にも姿を変えていた雲。

大好きな犬に成ったのを楽しんでいた。

そしたら母さんに変わった。

犬には話し掛けるのだが、母さんとは話さない。

言葉が違うんだ、と彼は一人ごと。

また変えた場所からは犬と猫が見える。

赤色に染まってきた雲の中ひときわ紫の人の姿が目立つように見えた。

動物達とじゃれ合うその人。

やはり母さんだ。

犬が母さんに話し掛ける。

どこかの寺が鐘を鳴らし始めた。

聞こえてないのだけど、母さん雲は僕の事を聞いて心配から、安心した微笑みを見せた。

鐘の余韻は幾つかの雲が消えていくのと同じように消えていく。

僕自身の何かも消えていくようだ。

そしてもう真っ赤に染まった空。

ああ、あの紫から赤に変わる、あそこが僕の居場所だな。

そう思ったら母さん雲が、お供を連れてそこに現れた。

僕のスペースを確保するように、風を吹かせながら。

もしかして母さんも見てるかもしれない。

そう考えたら恥ずかしくなった。

何だか勇気が要るけど、僕の居場所が増えたんだな。

そう思った時には陽が沈み、黒い空とぼんやりとした雲だけに成って居た。

今日ももうすぐ終わる。

だけどもう少しの今日と言う一日から、何かが変わって行く事だけははっきりとした。

星が瞬くように成る空。

海の青さも見に行きたくなった。

今度は一人じゃなく。

赤から青に変わっていく、その目を欺くかのような光景は、本当の事を教えてくれたようだ。

昨日とは同じ今日。

だけど今日から真実の何かが捕らえて離さない明日が待っている。

ああ、明日の朝日も見よう、そう決めて家路に着いた。













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